コラム
鉄筋(コンクリート)爆裂とは?補修方法や予防方法を解説
2022/04/11コラム
埼玉県川口市でタイル工事を専門に行っている田中タイル工業です。創業は1965年、55年以上の社歴があります。
基礎コンクリートの内部が破裂し、鉄筋が露出してしまっている状態を目にしたことはないでしょうか?そのような状態のことを「鉄筋爆裂」といい、放置してしまうと建物の耐久性が落ちてしまうなど、鉄筋爆裂にはリスクがたくさん潜んでいます。
今回は、鉄筋爆裂について、そのメカニズムや補習方法を解説していきます。
「鉄筋爆裂」とはどんな状態?
鉄筋爆裂は、コンクリート内部の鉄筋がサビて膨張してしまい、外側のコンクリートが浮き出してしまっている状態や、鉄筋が剥き出しになって崩落しているような状態のことを指します。
サビた液状のものが流れていたり、表面のコンクリートが一部欠落していたり、鉄筋が露出していたりと、視覚的にも確認しやすい症状です。
他にも潜在的な爆裂部分として、ハンマーや打診棒などで叩いて音の違いで発見することも可能です。
鉄筋爆裂が起こる原因
鉄筋爆裂を引き起こす原因としては、ガスや水分が影響しているケースが主になります。ただ、調べてみるといくつかの原因に分けることができます。
水はけの悪い立地や雨水浸透桝
コンクリートの性質として、「水を吸い上げる」という特徴があります。水はけが悪い土地の場合は、雨水を年中吸い続けることにより、中性化が進んでしまいます。
他にも、最近の住宅には屋根に降った雨水の処理に「雨水浸透桝」というものが使用されています。
雨水浸透桝は、降った雨を排水溝に流すのではなく、庭に浸透させる方法をとっています。そのため、雨が降ると桝が溢れ、基礎のまわりが水でいっぱいになります。
新築の住宅でもこの雨水浸透桝による爆裂が、今後は増えていく恐れもあります。
基礎の割れ
基礎にひび割れがあると、中に炭酸ガスや雨水が浸食してしまい、アルカリ性であるコンクリートが酸性に傾いてしまいます。この状態を中性化と呼び、中性化が進むと鉄筋の腐食が進み、体積が膨張することにより外側のコンクリートを崩落させてしまいます。
塩害
海に近い地域では、潮風による塩害でコンクリートが劣化します。塩害での爆裂は、コンクリートの塩化イオン濃度が上がることにより、鉄筋が腐食しやすい環境になります。こうなると、中性化と同様に腐食した鉄筋が膨張することにより爆裂現象を起こすことになります。塩害をきっかけに、やがて基礎コンクリート全体の劣化へと繋がってしまいます。
鉢植えの水やり
植木への水やりからくる爆裂が、意外にも多く挙げられます。コンスタントに1日に1〜2回水やりを行うので、基礎のその部分だけ濃い染みになることがあります。
業者の我々が点検の際に気がついた場合、基礎にお水をかけないように説明いたします。ですが、知らずに何年も繰り返し行ってしまうと、思わぬひび割れで悩むことになります。さらにひどくなってくるとひび割れが太くなり、爆裂現象に至ります。
鉄筋爆裂をそのままにするとどんなリスクがある?
鉄筋爆裂をそのままにしておくと、多くのリスクが生じます。ここではそのリスクについて見ていきます。
耐久性が下がってしまう
鉄筋爆裂が生じると、さらに中性化が進んでしまい、状態の悪い場所がどんどん広がってしまいます。さらにそのまま放置してしまうと、コンクリートが広い範囲で剥がれ落ちてしまうなどして、耐久性はどんどん下がっていきます。
耐久性が下がってしまうことで、建物そのものの寿命を縮めてしまったり、地震の影響を受けやすくなるなどのリスクが生じます。
景観を損なってしまう
鉄筋爆裂が生じたままにしておくと、外観など見栄えを損なう原因になってしまいます。
場所によってはサビた液体が滲み出てしまい、実際の築年数よりも古く見えてしまいます。
コンクリートが落下してしまう
爆裂によって内側から破壊されたコンクリート片が落下する恐れも考えられます。
また、落下したコンクリート片が下にいる人やものに当たってしまうと、大変な事故に繋がってしまい、賠償責任を問われるなど重大なリスクへと発展するリスクがあります。
可能な限り、早いタイミングで補修工事を依頼しましょう。
鉄筋爆裂の補修方法
鉄筋爆裂が生じている箇所には、どのような補修が有効なのでしょうか?
補修箇所を調査する
まずは、補修する箇所に漏れがないよう、建物全体をしっかりと調査します。ここで、補修箇所に漏れがあると、後々大変になるのでこの段階で隈なく調査を行います。
はつり
ハンマーなどを使用してコンクリートの脆くなっている部分を削る作業を「はつり」といいます。
削ってコンクリートを落としていくことで、最初は見えなかった鉄筋の場所までたどり着くことができるので、大切な作業です。
鉄筋のサビを落とす
鉄筋のサビをきれいに削って落とします。ここで少しでもサビが残ってしまうと、再発してしまうため入念に落とします。
成形
爆裂の再発をしないために、サビ止めの成分が含まれているプライマーを塗布して、モルタルを使って爆裂を起こしている箇所を埋め戻して成形します。
乾燥
最後に塗布したプライマーやモルタルを乾燥・硬化させて補修完了です。
▼田中タイル工業の下地補修についてはこちらもご覧ください。
補修のポイント
鉄筋爆裂を補修する際に、押さえておきたいポイントが2つあります。
それは、
● 鉄筋のサビをすべて取り除く
● コンクリート脆弱部分をすべて取り除く
ことです。
一旦鉄筋がサビてしまうと、膨張して爆裂が起こり周辺のコンクリートを内側から破壊します。その後、破壊された部分から、より中性化が進んでいき、鉄筋のサビている範囲が広がります。補修を行う場合、悪循環のサイクルを完全に断つ必要があります。
そのために、「コンクリート脆弱部分をすべて取り除く」、「鉄筋のサビをすべて取り除く」ことを確実に行う必要があります。
コンクリートの脆弱部分が残っていると、補修後もひび割れや欠損が起こりやすく、そこから水分や空気が入り込み中性化が進行してしまいます。鉄筋にサビが残っていると、補修後にも症状が進行して再度爆裂を引き起こす恐れがあります。
コンクリート爆裂を補修する際は、根気強く丁寧な作業をコツコツと行う必要があります。
鉄筋爆裂が起こりにくいようにする方法は?
爆裂を予防するにはいくつかの方法があります。
中性化対策
中性化は、空気中の二酸化炭素によって、アルカリ性が失われていき進行します。そのため、中性化を未然に防ぐには二酸化炭素の浸入を防止することが大切なポイントです。
劣化因子の遮断は、躯体表面を塗膜防水材などで被覆したり、ひび割れ補修により二酸化炭素の浸入経路をなくし、二酸化炭素を遮断したりすることで中性化を防止する方法です。
主に内部の鉄筋が腐食する前の「潜伏期」や、軽微な場合の「進展期」での予防保全として適用します。
早い段階で対応をしておく
コンクリートの爆裂を予防するためには、症状が軽い段階で早めに処置を施すことが大切です。
コンクリートの劣化症状で表面に現れやすいのはひび割れですが、規模が拡大する前に適切な処置をとることで爆裂など不測の事態を回避することも可能です。
ただ0.3mm未満のひび割れはヘアークラックと呼ばれていて、危険性が低いため、急いで補修しなくてもよいでしょう。
ポリマーセメントペーストなどで被膜することも有効ですが、経過を観察し規模が大きくなるようなら補修を検討するのもよいです。
まとめ
基礎コンクリートの内部が破裂し、鉄筋が露出してしまっている状態である鉄筋爆裂は、経年劣化とともに生じるケースが多いです。そして、そのまま放置してしまうと建物そのものへ甚大な被害を及ぼす恐れもあります。
異変に気がついた段階で、早めの処置を行うことが大きなポイントになります。調査を行う際は、自分で行うのではなく専門の業者へ依頼しましょう。