コラム

大規模修繕とは?その具体的な費用や内容、改修との違いについて

2022/07/15コラム

創業1965年、埼玉県川口市でタイル工事を専門に行っている田中タイル工業です。

突然ですが、大規模修繕工事を知っていますか?
大規模修繕工事とは、ビルやマンションなどの安全性や美観を維持し、資産価値を守るために定期的に行われる大規模な修繕工事のことです。マンションにお住いの方にとっては周知のことかと思いますが、「修繕積立金」という名目でマンションの所有者は管理組合に毎月一定額を支払っています。つまり、大規模修繕工事はマンションの所有者が出し合ったお金で行う工事なので、内容や金額についても厳しく問われるのです。

今回は、大規模修繕工事について、あらためてその定義や具体的な工事内容、費用の目安などについてお話していきます。

大規模修繕とは?

大規模修繕に定義はあるのでしょうか。「大きなビルやマンションで、定期的に行う大掛かりな工事」程度のイメージはあるかと思いますが、少しここでは踏み込んで法的な側面から考えてみたいと思います。さらに、「改修工事」と「修繕工事」の違いについてもご説明します。

大規模修繕の定義

大規模修繕の法的な定義については、以下のようになっております。

「大規模の修繕(とは) 建築物の主要構造部の一種以上について行う過半の修繕をいう。 」(建築基準法第2条14号)

ここでいう主要構造部とは、建築基準法第2条5号で規定された「壁、柱、床、はり、屋根、または階段」のことであり、これらの一種以上で、過半つまり半数以上の修繕を行った場合、それは大規模修繕ということになります。

「修繕」と「改修」の違いについて

大規模修繕工事を行う際に、「修繕」に加えて「改修」を同時に行うことがあります。大規模修繕工事の期間はマンションに足場がかかっているので、抱き合わせでいくつかの工事を行うことが理にかなっているからです。しかし、この「修繕」と「改修」は似て非なるものです。

修繕とは、一言でいうと現状復帰です。
経年劣化した外壁や、不具合が生じた設備などを直し、本来の機能を回復させる工事を修繕工事といいます。

対して改修とは、現状復帰プラス改良です。つまり、現状よりもグレードアップさせることです。劣化や不具合を直すことに加えて、住む人の年齢やライフスタイルの変化、そして時代のニーズなどに合わせて性能を高める工事を改修といいます。

「修繕」と「改修」は必ずしもセットというわけでもありませんが、同時に行うメリットは多々あるので、改修工事に関しては日頃から必要性と工事のタイミングを考えておくとよいでしょう。

修繕を行う必要性、メリット

大規模修繕工事のメリットは、大きく2つあります。

1つ目は資産価値の維持です。
マンションは築年数の経過とともに劣化していきますが、建物の性能が落ちたり美観が損なわれたりすることによって、マンションの資産価値も下がってしまいます。マンションの価値は、収益価値と売却価値に分かれますが、資産価値が下がると投資物件として賃貸にするときの家賃やマンションを売却するときの査定に影響するので、少しでも高い状態を保つことが理想とされています。大規模修繕によって劣化を遅らせることは、資産価値を守るという意味で大きなメリットといえます。

そして、2つ目は安全性の確保です。
マンションのような規模の大きい建造物は、そこに住む人に対してだけではなく、近隣住民に対しても安全でなければなりません。マンションに住む人にとっては、構造的に強度が保たれ耐震性能を満たしていることが重要ですが、耐震基準は時代とともに厳しくなる傾向があるので、大規模修繕のタイミングで耐震補強を行うことがあります。一方、近隣の住民に対しては、外壁の劣化によるタイルやモルタルの剥落の危険性があるので、大規模修繕により外壁補修を行います。

このように、大規模修繕には資産価値を守ること、そして安全性を確保するという2つのメリットがあります。

修繕にかかる費用、期間について

費用

大規模修繕工事では、一体いくらくらいの費用が必要とされるのでしょうか。マンションの規模や工事内容にもよりますが、一般的には1戸あたり100万円前後といわれています。総額としては、この金額に戸数をかけることになるので、例えば100戸以上の規模の大きなマンションでは1億円以上かかることもあります。

マンションの管理組合が「修繕積立金」として、毎月一定額を所有者(マンションの住民)から徴収して積み立てているため、大規模修繕工事の際に住民が支払うことはありません。しかし、当初の想定よりも大規模修繕工事が大掛かりになり、工事費が予算をオーバーしてしまう場合には所有者に対して修繕積立金を追加徴収することもあるので、注意が必要です。

期間

大規模修繕工事にかかる期間は、一般的には計画から工事着工までが1〜2年、そして工事着工から工事完了までが半年〜1年とされています。もちろんマンションの規模や工事内容にもよりますが、共通していえることは実際の工事期間よりも着工までの準備期間の方が長いということです。というのも、大規模修繕工事に際しては、工事のあれこれを決めるためにマンションの住民による修繕委員会が組織されるのですが、構成メンバーの意見がまとまらずに時間がかかることが多々あるからです。着工してからはよほどのトラブルがない限り、長くても1年が相場でしょう。

大規模修繕の周期目安について

大規模修繕の周期については、国土交通省が発表している「長期修繕計画作成ガイドライン」で細かく示されています。

修繕工事の時期は、早過ぎると不要な修繕となり、また遅すぎても劣化が進み計画修繕工事費を増加させるので、最適な時期を見極める必要があります。修繕周期は、マンションの仕様や立地条件によって変わり、また工事項目ごとにおおよその目安が設定されているので、これらを踏まえて現状と照らし合わせながら修繕周期を決定していきます。ガイドラインによると、屋根や外壁などの主要構造物の多くは12年〜15年で設定されていますが、建材や設備機器の耐久性や性能保障などから、およそ12年と考えるとよいでしょう。

参照:国土交通省「長期修繕計画作成ガイドライン」

大規模修繕工事の流れについて

ここでは、大規模修繕工事の流れについてご説明します。

1.共通仮設の設置
大規模修繕工事の際に間接的に必要な現場事務所、トイレ、道具洗い場、資材置場、職人さんの休憩所などを設置します。

2. 仮設足場の組立
足場なしでは作業できない高所作業用に、仮設足場を組み立てます。足場の設置後、足場の周囲に飛散防止のためのメッシュシートを張ります。

3. 調査・下地補修工事
外壁や下地の劣化状況を調査します。補習が必要な箇所にマーキングします。マーキングに従って、補修工事を行います。

4. シーリング打替え工事
劣化した古いシーリングをはがし取り、新しいものを充填します。

5. 洗浄工事
外壁や天井、床などを高圧水などで洗浄して汚れを除去します。

6. 外壁塗装工事
外壁塗装工事の目的は、美観を保つだけでなくコンクリートを保護することにあります。
十分に洗浄した現状の塗装の上に新しい塗料を塗ります。

7. 鉄部等塗装工事
メーターボックスの扉等の金属部分や、パーティションボードや樹脂等の外壁以外の非金属部分の塗装を行います。

8. 防水工事
防水工事の主な工事箇所は屋根(屋上)、ベランダ、ルーフバルコニー、廊下などです。バルコニーはウレタン防水、開放廊下は塩ビシート貼りが多くみられます。

9. 足場解体
足場解体前検査を行い、不具合があれば手直しを行います。手直し完了後に足場解体作業に入ります。

10. 共通仮設解体
竣工検査とその手直しを行い、現場事務所等の共通仮設物を解体・撤去し、竣工図書を引き渡して工事は竣工となります。

参照:株式会社 長谷工リフォーム「大規模修繕工事」

まとめ

本記事では大規模修繕工事について、その定義や「改修」と「修繕」との違い、具体的な費用・期間について説明しました。大規模修繕工事はマンションの資産価値を守り、住む人の安全を支える重要な工事です。12年に1度という目安はありますが、毎日の生活の中で建物に不具合や劣化を発見したら早期対策することがマンションを長持ちさせる秘訣です。大規模修繕が想定よりも大掛かりにならないためにも、日頃からのメンテナンスも心がけましょう。